【翻訳】なぜ私やあなたは経営陣にUXへの投資を説得できないのか(Jared M. Spool, Center Centre, 2011)

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数週間に一度、突然電話やメールがかかってきて、マジックを披露するように頼まれます。その依頼者は、いつも同じことを望んでいます。それは、会社の重役たちが集まる部屋の前に立ち、彼らが立ち上がって歓声を上げるようなプレゼンテーションで喜ばせることです。そして、この聴衆は部屋から飛び出して、部下に要求し、会社、プロダクト、そして世界に革命を起こすような、全体的で手加減のないユーザー体験の取り組みにすべてを投資するのです。

なるほど、少し大げさかもしれません。しかし、私は頻繁に経営者にユーザーエクスペリエンスへの投資を説得するよう依頼されます。

そして、私が毎回その申し出を断っていることを知ると、皆さんは驚かれるかもしれません。UIEのポリシーとして、私たちは結果を保証できる仕事しか引き受けないのです。経験上、経営者を説得できる見込みがないことは分かっているので、丁重にお断りしています。

「でも、これだけ成功しているのだから、UXに投資するよう幹部を説得するのに必要なことは分かっているはずだ」と、いつも聞かれます。

実は、そんなことはないんです。私は23年間サービスを売り込んできましたが、一度も経営者を説得できたことはありません。

私たちが成功したのは、経営陣を含むクライアントチームが、優れたユーザー体験の価値をすでに理解していたプロジェクトのときだけです*1。私が彼らを説得しなかったのは、彼らが説得を必要としなかったからです。

喫煙者に会ったことがありますか?もちろん、ありますよね。喫煙の害を知らない喫煙者に会ったことがありますか?きっとないでしょう。私の知る限り、喫煙者は皆、喫煙が自分の体にどんな影響を及ぼすかよく知っているにもかかわらず、喫煙を続けているのです。身体的、文化的、そして行動的な力が、禁煙を難しくしているのです。

喫煙者に禁煙するように説得することはできません。ただ、彼らがやると決める必要があるのです。自分自身で。その気になるしかないのです。

経営者も同じです。私でも、あなたでも、他の誰でも、経営者にユーザー体験に投資するように説得することはできません。

確かに、楽しくて便利で使いやすいプロダクトが、イライラする使いにくいプロダクトよりも優れていることに、なぜかまだ気づいていない重役はいるかもしれません。私はこれまで一度も会ったことがありませんが、存在する可能性はあります。それでも、プレゼンテーションで彼らの見解が変わるとは思えません。

では、プレゼンの代わりにできることは何でしょう?

幹部がすでに納得している事柄なら知ることもできます。もし、彼らが優秀であれば、何か改善したいことがあるはずです。それは、収益の向上、コストの削減、新規顧客の増加、既存顧客からの売上増加、株主価値の向上などに関するものである可能性が高いでしょう。

優れたUXは、そのどれにも貢献することができるのです。問題は、これらの改善のいずれに対しても、汎用的で、常に世界を救うプロセスやソリューションが存在しないことです。もし私に手伝ってほしいと言われたら、あなたのビジネスを深く研究し、確かなUXの投資によってこれらの分野を改善する方法を学ぶ必要があります。

(ちなみに、このプロジェクトは私たちが請け負い、保証します。私たちはこれまで何度もこのプロジェクトを行ってきました。費用はかかりますが、素晴らしい結果が得られます)。

経営陣がすでに納得していることをその口で話し始めると、投資をさせることが容易になります。あなたはもはや、彼らの焦点を変えさせようとはしていないのですから。そこで、彼らの主な関心事に直接的に関わることができるのです。

アップルやその他の企業がいかに素晴らしいユーザー体験プログラムを持っているかという一般的なプレゼンテーション(もっと悪いのは、世界中のあらゆる悪いユーザー体験を紹介するプレゼンテーション)では、何か違うことをしようという人を説得することはできないでしょう。

何か特別なことをする必要があるのです。彼らの現在の関心事に特化した何かです。

それでもダメなら、どこか別の場所を探すべきかもしれません。経営陣がすでに納得し、投資したいと思うようなところです。今、市場にはそのような機会がたくさんあります。好きなことを仕事にできるのに、なぜ壁に頭をぶつけるのでしょうか。



*1:強調は訳者による