【翻訳】Slackを270億ドルの企業にした、たった1つの決断( JEFF HADEN, Inc. 2022)

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創業者のスチュワート・バターフィールドが一番やりたくなかったことは、「馬具を売ること」だった

2013年のこと、Slackを開発したTiny Speckのチームは、マーケティング上の問題を抱えていた。確かに、彼らは便利なものを作っていた。グループチャットシステムとして、Slackは機能していたのだ。

しかし、顧客はグループチャットシステムを探しているわけではない。ソフトウェアとその機能のマーケティングなど、多くのものがそうであるように、人々は特定のタスクを実行するため、あるいは既に持っている問題やニーズを解決するためにソフトウェアを購入する。

グループチャットシステムが必要だと考えていない(ましてや知らない)場合、それがどんなに機能満載であっても、なぜ自分のビジネスのために「グループチャットシステム」を採用したり、ましてや購入したりすることがあるだろうか?― 問題を抱えていることを認識していない場合、解決策は解決策とは成り得ないのだ。

Slackの創設者であるスチュワート・バターフィールドチームへのメモに書いているように。

私たちの立場は、多くの新しい企業が置かれている立場とは異なります。私たちは、明確な既存企業が存在する、大きく、明確に定義された市場で戦っているわけではありません。直接の競合は数少なく、表面的には似たようなツールが乱立しているにもかかわらず、われわれは"新しい"市場を定義しようとしているのです。

つまり、製品の改良にとどまらず、市場の改良も必要なのだ。

どのように?バターフィールドの言葉を借りれば、「ここでは馬具は売らない」のだ。

その前提は単純だ。例えば、あなたの会社が馬具を作っているとしよう。値段をウリにすることもできるし、革の質で売ることもできる。あるいは、快適さや調整可能性、サイズ、またはフィット感、または耐久性。

あるいは、馬具を売るのではなく、「乗馬」を売ることがもできる。ライフスタイル。その感覚。馬との絆。冒険心。あるいは、ハーレーダビッドソンのように販売することもできる。自由、独立、クール、そしてワルであること......。

顧客がなりたい人物像を販売することが可能なのだ。

そして、バターフィールドはそれを実践した。彼は、Slackがマーケティングと製品開発の両方において、顧客がどのような存在になり得るかということに焦点を当てるべきだと考えたのだ。

  • 検索すればすぐに情報が得られて、よりリラックスして生産性を高めることができる
  • 途切れることのないコミュニケーションに圧倒されることのない情報の達人
  • チームで何が起こっているのかが分からないというフラストレーションが軽減される
  • 意図的にコミュニケーションをとることができるようになる

バターフィールドにとって、Slackは組織の変革を売るものだった。つまり、人々やチームがより生産的で、協力的で、効果的になることを支援し、メール業務を大幅に削減する。Slackはそのためのツール群に過ぎないのだ。

次のようにバターフィールドは書いている

私たちは、情報過多の解消、ストレスからの解放、そしてこれまで役に立たなかった企業アーカイブの膨大な価値を引き出す新しい能力を売っているのです。より良い組織、より良いチームを作ることを売っているのだ。これは、人々が購入する価値のあるものであり、また、私たちが長期的に販売するのに適したものなのです。私たちは、より良いチームを作りだすことによって、成功することができるのです。

顧客はどうだろう?―あなたが何を売るかなんて気にしていない。

彼らが気にするのは、何を手に入れることができるかということだ。それがどのように問題を解決するのか。ニーズを満たす。彼らが感じるのを助ける。彼らが働くのを助ける。

そして、彼らが生きていくことを助ける。

もしあなたが新しいものを作ったり、比較的ニッチな市場にいるのなら、馬具を売ろうとは思ってはならない。

乗馬を売るのだ。

それがうまくいけばいくほど、つまり、顧客がどのような人間になれるかというビジョンを共有すればするほど、顧客がそこに到達するための手助けとして、あなたを選ぶ可能性が高くなる。